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柳と民藝

中之島美術館で開催されていた「民藝 美は暮らしの中にある」展を見に行きました。

随所に柳宗悦の言葉があり、展示物とともに読み進めると、
各地を巡りながら「用の美」を集め、自身の思想を具現化しようとした柳の様子が分かります。

パリの蚤の市で掘り出し物を探す柳
東京のせんべい屋さんの店頭にあった大きな壺を譲ってくれと交渉する柳
朝鮮に行ってあれもこれもと買い集める柳
天神さんと弘法さんに通いつめる柳
全国各地を巡ってときめく物を買い集め、時々窯元へ指導をする柳
沖縄カルチャーに感激し、すぐに仲間を連れて再訪する柳

とにかくめちゃくちゃ楽しそうです。

大昔、哲学の授業で柳宗悦の思想と活動について学びましたが、その頃とは違った印象を受けました。
(資金調達どうしてたんやろ)
(物作りも教育もディレクションもビジネスもできてすごいなあ)
(出張多すぎて奥さん苦労したんちゃうか)
(気の合う仲間といろんなとこ行ってほんま楽しそうやな・・・)

偉業とは、「本人にとって苦ではないが、人には真似できないこと」なのだと思いました。
衝動のままに夢中になっていたらとんでもない高みに到達した、そんな軌跡です。

ところで、ミュージアムショップには有名セレクトショップとのコラボにより国内外の民藝の品が並んでいました。

そこに、リーチポタリーの器も並んでいました。
9年前にロンドンを訪ねた際、往復13時間もかけてイギリスの左下のとんがりの先っぽであるセントアイヴスという港町へ行きました。
どうしても行ってみたかった、バーナードリーチが興した窯です。
そこではリーチポタリーの現行品が製造されているほか、現代作家のための制作と発表の場となっていました。
その時に購入した器たちは今でも宝物です。

それらの器がミュージアムショップで販売されていました。
私がまだ持っていない形のマグカップもあり、魅力的です。

が、思ったのです。
やっぱり現地に行って買うのが嬉しいなと。
しかも、とにかくいろんな地を訪れて夢中で買いまくった柳について見た直後です。
ミュージアムショップでは何も買わずに帰りました。

いつかまたセントアイヴスを訪れて、ゆっくり過ごしてみたいと思います。



畔柳

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喫茶マーチ

現在の場所に事務所を構えてはや2年半。
ランチはほとんど三条商店街で済ませていたので、最近まで気づかなかった後院通沿いのお店のご紹介。

喫茶マーチさん。大宮駅からは歩いて5分くらい。
魅力はなんと言っても580円の日替わりランチです。
最近行った時はとても美味しい鯖の味噌煮でした。見た目で判断されたのかご飯大盛にしてくれて、お腹いっぱいでした。
店内に入ると、いまやレトロなお店のサインとして機能していそうなストライプのオーニングテントの陰がほどよく目隠しになり、大通りに面したガラス近くの席でも落ち着いて食事ができました。

どうやらビーフシチューの日があるらしい。
また行ってみます。


畔柳

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OXO アングルドメジャーカップ

一番好きなプロダクトです。
腰をかがめたりカップを持ち上げてメモリを確認する作業、
自然で当たり前で、それが苦労だと認知されていなかった小さな苦労を、軽やかに解決した製品です。
賢く合理的なソリューション、その発想に感嘆します。

2002年ごろに購入しました。
キッチンツールが特集されたデザイン誌で知ったと思います。
画期的な、まさに「デザイン」を体現したような製品だと感じました。

2003年に大学で受けたデザイン方法論の授業で、身の回りの製品のデザインについて説明するという課題に対して、私はこのカップについて記述しました。
担当教官から「題材が良いですね」とコメントをもらい、自分が書いたレポートではなくカップ自体が褒められたことが印象に残っています。

それから20年使い続け、ついに底面にひびが入り、液体がじわじわ漏れてくるようになりました。
2022年に同じものを再び購入しましたが、初代カップを捨てる気になれず一緒に保管しています。

新旧を比較すると、新しいものは
・持ち手がわずかに細く
・指がかりが深く
・数字と文字が太く
なっていました。

20年の間にこんなに微妙なモデルチェンジをしていることに、一体どれだけの人が気づいているでしょうか。
金型を作り直すタイミングで整えたのか、この形状を決めた誰かの思考を想像します。

残念なことに、20年の間にこのアイデアを模倣した安価な商品が次々に発売されました。
多くの人に共感されるものは、唯一無二であり続けることはできないようです。
100円ショップで類似品を見るたびに、OXOのアングルドメジャーカップは「あたりまえ」になったのだなと感慨深いです。
革新的なアイデアが、生活に染み込んで様式になったとも言えます。


畔柳

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国産紅茶

奈良関連の話が続きます。


国内で作られている紅茶に出会うと嬉しくなります。

以前、九州から戻る新幹線の車内販売で購入した水俣紅茶の美味しさに驚き、その場で検索して茶葉を注文したことがあります。
車内販売用のパッケージに何も情報が無く、特定に苦労しましたが、その大変美味しい紅茶は桜野園さんの「さくら紅茶」でした。素朴でありながら香り豊かで、ほのかな甘みがあります。とても気に入って、それからも時々購入しています。

JWマリオット・ホテル奈良のお部屋に用意されていたのは、JUNICHI UEKUBO(上久保淳一)さんの煎茶、ほうじ茶、紅茶でした。
上久保茶園さんというメーカーで、奈良県月ヶ瀬で手もみの日本茶を作られているそうです。

月ヶ瀬というと、国産紅茶のイメージがあります。私は、光浦醸造さんのフロートレモンティーに使われていることで知りました。

JUNICHI UEKUBOさんの紅茶は、渋味が無く、角が取れたまろやかな風味で、どんどん飲めてしまう滑らかな舌触りでした。
また、煎茶は甘味が強く、ほうじ茶は香ばしく、いずれもお茶の「難しい部分」を取り除いた、多くの人に受け入れられそうな優しい風味です。
奈良に来て、奈良の美味しい紅茶を新たに知ることができて嬉しい限りです。

今は家の中からたくさんの情報を得ることも、商品を購入することもできますが、やっぱり良いものに出会うには実際に行ってみるのが一番です。思いがけない出会いによって、自分の世界が広がるのを感じます。

畔柳

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鹿 鹿 鹿

JWマリオット・ホテル奈良の中にはいくつもの鹿がいました。

ロビーの大きな壁画、木彫りの置物、スタッフの方が腰につけているワイヤレスマイクのバッグ、客室には小さな木彫りの置物、角の壁飾り、エレベーター内の鏡に鹿の絵、子供向けのノベルティには鹿のぬいぐるみ、鹿の塗り絵などなど。
かっこいい鹿、素朴な鹿、エレガントな鹿、抽象化された鹿、可愛い鹿、鹿、鹿、鹿。あらゆるタイプの鹿。

鹿の概念化と再解釈が繰り返された形跡を感じます。
インテリアデザイナーも、客室のコーディネーターも、ファッション(制服)デザイナーも、グラフィックデザイナーも、とにかくみんながみんな、「やっぱり鹿は入れたいよね」という気持ちで仕事をしたかと思うと、鹿の人気ぶりにたまらない気持ちになります。

それに負けじと、JWマリオットのシンボルであるグリフィンも随所に現れますが、数で負けていました。
日本唯一のJWマリオットを作ったのが奈良ですから、それは仕方ありません。


畔柳

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